わたしのAnother Birthday

人間の本性って何だろう

幼少の頃、祖母に、お風呂で体を洗ってもらいながら、「誰も見てないと思っても、お天道様がどこかで見ている。周りの人のことを考えず自分のことしか考えない人間になってはだめだよ」と繰り返し聞かされた。以来、学生時代を経て社会人として生きていくうえで、こころの深層にその言葉が埋め込まれ、時々祖母の顔も浮かんできた。
最近、『国富論』で有名な自由主義経済思想の元祖アダム・スミスが、もうひとつの著書『道徳感情論』の中で、人間には、自分の利益を考える一方で、他者に対する共感から道徳的な判断をするこころの働きがあると述べていることを知った。〝利己″と〝利他″は対立ではなく共存しながら、社会という巨大な共同体が形成されているのだという。どこかで祖母が伝えたかったことと重なった。

「誕生日寄付」で、「寄付文化」を育てよう
振り返れば、これまで災害時などに「寄付」をしたことがあるが、現地でボランティア活動に参加されている方々が汗水流して働く姿を見て、自分に引け目を感じて、周囲の人に「寄付で応援しよう!」という話は持ち出しにくかった。

日本フィランソロピー協会で「誕生日寄付」の構想を知った時、これまで寄付に抱いていたもやもやした感情がやわらいだ。自分がいのちを授かった記念日に、自分を育ててくれた世間に、〝寄付″という〝かたち″で〝ありがとう~″と感謝の気持ちを伝える。とてもシンプルな内容である。祖母やスミスが生きていたら、きっと共感してくれただろう。
「誕生日寄付」なら、こっそり参加するのではなく、周囲の人たちに、「楽しいからやってみたら…」と声をかけやすい。
「誕生日寄付」が365日つながり、日本の「寄付文化」定着の原動力に育つことを夢見て、次の誕生日も迎えたい。

田中 秀男(たなか・ひでお)

富士通株式会社の人事/研修部門を経て、組織内ベンチャー富士通ブックスの創設に関わる。その後、株式会社インタープレイを設立、アナログメディアとデジタルメディアとの接点で電子出版等の仕事に従事。その傍らでJPAの機関誌制作等に携わる。